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1. ラジカル殺菌技術を応用した歯科医療機器の研究開発

 消毒薬として用いられる3%過酸化水素に対して青色の光を照射することで、活性酸素の一種であるヒドロキシルラジカルが生成されます。我々の研究室では、このヒドロキシルラジカルの酸化的殺菌作用を応用した局所殺菌技術の研究開発を行っています。
 これまでの非臨床試験において、過酸化水素光分解殺菌技術の高い殺菌効果(Ikai et al. Antimicrob Agents Chemother 54, 5086-5091, 2010, Nakamura et al. Int J Antimicrob Agents 48, 373-380, 2016)と安全性(Niwano et al. Regul Toxicol Pharmacol, 90, 206-213, 2017)に加え、耐性菌誘導リスクが非常に低いことを報告してきました(Ikai et al. PLoS ONE, 8, e81316, 2013)。 これらの基礎試験を基にラジカル殺菌歯周病治療器を開発し、医師主導治験において有効性と安全性を実証しました(Kanno et al. Sci Rep, 7, 12247, 2017)。
 今後は、本殺菌技術を応用した齲蝕治療器やインプラント周囲炎治療器の研究開発を進めます。

2. ポリフェノールの酸化促進作用を応用した殺菌技術の研究開発

 ポリフェノールは植物の種子や果肉に豊富に含まれている物質であり、抗酸化作用を有することから健康増進効果などが期待されています。
我々の研究室では、ポリフェノールに紫外線を照射した際に、抗酸化作用とは反対に酸化促進作用が発揮されることに着目し、この反応を応用した殺菌技術の研究開発を行っています(Nakamura et al. J Agric Food Chem 63, 7707-7713, 2015)。 酸化促進作用はポリフェノールに対する紫外線照射によって生成される過酸化水素や、この過酸化水素がさらに光分解されることで生成するヒドロキシルラジカルに起因します。 本殺菌法では、紫外線照射中にのみ高い殺菌効果が得られ、照射後には残存したポリフェノールによる抗酸化作用や生体組織の保護作用が期待できます。 そこで、新しい齲蝕治療法あるいは口腔衛生管理法としての応用を目標とした研究開発を行っています(Nakamura et al. Sci Rep 7, 6353, 2017)。

3. 補綴歯科材料の機械的・生物学的特性の評価

歯科用CAD/CAM技術の発展に伴いジルコニアやコンポジットレジンのブロックから削り出した補綴装置の臨床応用が増加しています。 これらの新しい補綴歯科材料には、臨床試験および非臨床試験での十分な評価が求められています。
 そこで我々の研究室ではこれらの材料の強度、疲労耐性、生体親和性、細菌付着性などの研究を行っています。 これまでにCAD/CAM製のフルカントゥアジルコニアクラウンやレジンクラウンが大臼歯部でも応用できるだけの強度を有していることを非臨床試験で実証してきました(Nakamura et al. Acta Odont Scand, 73, 602-608, 2015, Harada et al. Eur J Oral Sci, 123: 122-129, 2015)。 将来的には基礎研究の結果を臨床研究で検証します。
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